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約3,000人のセムコ社のチーム編成とは?
高森氏:セムコ社はそもそも3000人という大規模な企業ですよね。ある意味奇跡的で再現性無いよ!と思われる方もいらっしゃる。 小さな組織や会社の一部でやることもあるんですか?
秦氏:ベンチャー企業で導入することもありますし、大企業でもやることもあります。その時に基本的に大切にしている考え方は、10人単位でチームを組むということです。
楠木氏:セムコ社も、大きな組織ですけど、小さなビジネスの集合体ということですね。
秦氏:10人以上のスポーツってなかなか限られていて、ラグビー(15人)とか、野球もおよそ10人、サッカーもほぼ10人ですね。 30人、50人だと何が起きるかというと、宗教だったりとか、宗教を超えて戦争になっちゃったりとか。
10人単位で組む理由っていうのは、お互いがどういう人で、何に興味があって目標があるかとか、このチームに参画している理由はなにかとか、その人の貢献領域とか、そういうのが全て明らかになると「このチームにいると幸せだな」ってなりやすいからなんです。
僕の会社は今2,30人の会社ですけれども、3000人でも現状✕100なんで、難しい話ではないなというふうに思っています。
楠木氏:そのような規模で考えるならば、これは普遍的なモデルとして考えられますね。
セムコ社のような自主自律型組織について、小さい組織だから実現できている、大きな組織だと実現が難しいものだ、もしくは実現できないものだと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
セムコ社は約3000人も社員がいるにも関わらず、「セムコスタイル」とも呼ばれる独自の経営スタイルを実現しています。
そのためには、組織をどのようなチームで構成すると”社員”が幸福を感じられるか、それは本当にそうだろか、と考え続けた結果、現在の10人単位のチームが採用されたそうです。
セムコスタイル型組織への改革
実際にヒエラルキー型から、自主自律型に変革した事例では、どのような組織が実現されているのでしょうか。
トーク中に秦から紹介があった、オランダに300年前からある大手銀行ABN AMURO、従業員数3,500名以上の組織で起きた事例をご紹介致します!
従来の階層型組織では、絶えず変化する顧客のニーズを満足させるサービスをスピーディに提供できなくなっていたため、ABN銀行の経営陣は、組織を変化させる機会を探していました。
その意図する変化が、従来のヒエラルキー型組織から自主自律型組織へのシフトでした。そこで、コンペにて選ばれたのがSSI(SEMCO STYLE INSTITUTE)となり、パートナーとして組織改革を進めていきました。
経営陣が意図した大きな変化は2つで
①「ビデオバンキング」というオンラインサービスへのデジタルシフト。
②スピーディーに意思決定ができる「自己組織型(俗にいうティール型、セルフマネジメント型・自主経営型)」への組織モデルへのシフト
ビデオバンキングによって、顧客はわざわざ銀行の窓口に行かなくても、オンラインでいつでも対面のサービスが受けられます。全てのやり取りはアプリやオンラインで完結できるようになります。
また、自己組織型によって、現場のメンバーはいちいち管理職の承認を仰がなくても、自己判断で意思決定し、顧客にサービスを提供できるようになります。
このシフトにより、現在ABN銀行では、顧客の8割がビデオバンキングを利用し、顧客満足度はこの2年で、約4点から9点(10点満点)に上昇したそうです。
黄色の図は従来の改造型の組織モデルです。
一番下に有るClient(顧客)から上に、対応チームがあり、上長があり、支社長があり、エリアマネージャーがあり、地域ディレクターがいて経営チームがあるという6層の縦割りの組織構造でした。
一方で、青色で示されるものは自己組織型にシフトした後のモデルで、横型のフラット構造になっています。
そこには、顧客に対して対応するチームがあり、それを支えるスキルコーチとチームコーチがいます。あとは経営チームが有る3層構造です。
3,500人の組織は、350のユニットに分けられ、25のスキルリード、30人のチームコーチ、30人のスキルコーチのチームによってサポートされます。
そして、全員が顧客に価値を創ることにフォーカスするようになったと言います。
自己組織型モデルを導入してからは、より柔軟で起業家精神があり、自己規律とオーナーシップと自主自立があるようになってきたそうです。
当初の課題であった、素早く変化する顧客のニーズに合わせたサービスをスピーディに提供すること、この実現が顧客満足度9点(10点満点中)という結果に表れているのではないでしょうか。
海外のメソッドを日本に導入する際の課題とは?
このような海外の事例は、SSIJ(SEMCO STYLE INSTITUTE JAPAN)のホームページにも記載されています。
しかし、ここでこのように思う方はいらっしゃいませんか?
所詮海外の事例なので、日本で実現するには無理がある。
そんな疑問に対して、楠木建氏がこのようなトークをしていらっしゃいました!
高森氏:セムラーが日本に来て、日本の経営者約300人に向けて公演をして頂いた時に、多くの方の声として、『ブラジルの会社だからね』『日本でやるのは無理がある』という声が聞こえてきました。
日本でセムコスタイルというものが広がっていく、または受け入れられていくためにはどんな課題が有ると考えていますか?
楠木氏:ビジネスでいえば、思っているほど国とか、地域の文化というのは、あまり影響が無いんじゃないかと考えたほうが良いと思っています。
ビジネスなので、所詮合理的に回っていくことが必要になるわけで、合理性に文化的な違いはないんじゃないかと思いますね。
80年代に日本企業が拡大していった時に、日本的経営ということが世界中から関心になって、当時今で言う「奇跡の経営」みたいな形で日本企業が紹介されていたんです。
終身雇用とか、みんなで飲みに行くとか、ラジオ体操やるみたいな。今となっては日本もやってないじゃないですか。
そして、80年代に「プロフェッショナルマネージャー」という本を書いたハロルド・ジェニーンというアメリカの経営者が、書籍の中でこんなことを言っていました。
『今、日本的経営とか言って集団活動とかやっている。表面的にはそういう違いがあったとしても、日本企業の実態を多く見ると、ほぼアメリカ組織と同じ合理性に基づいてやっている。そうじゃないと、そんなにビジネスとして回っていくはずがないから。』
会社経営において、合理性に世界で共通するものがあるということが、アメリカの書籍の中にもあるとご紹介いただきました。
この合理性に共通する部分があるからこそ、セムコスタイルでいうところの「原則」を用いた考え方によって、従業員の幸福度と顧客への提供価値の最大化がトレードオンになるのではないでしょうか。
最後に
奇跡の組織では、「階層・組織図なし」「戦略・計画・予算なし」「人事部なし」「企業理念なし」「決まったCEOは不在」などの組織の形態について注目されがちです。
しかし、あくまでも大切なことは、形態や制度などのプラクティスではなく、人を中心に本来どうあるべきか?をメンバーを巻き込んで考え続けるということでした。
やり方やプラクティスだけを真似て、その背景にある目的を見失うということは、多くの人が陥りがちな失敗ということです。
なにかを他者から学ぼうとする際の根本の姿勢を学ばせていただきました。
また、セムコスタイルの根本的な考え方や目的を見失わずに、原理原則に基づいて組織改革を少しづつ進めていけば、
日本のどんな企業であっても「従業員がイキイキと働く組織」「会社に眠っている知性が表出する組織」を実現できるのではないでしょうか!
このレポート記事を通して、少しでも皆様の組織づくりの参考になれば幸いです。
また、本セミナーでは「セムコスタイルの5つの原則」や具体的事例についてはあまり扱っておりませんでした。
SSIJのホームページに詳しい内容、海外や日本の事例、勉強会の開催などの情報が記載されていますので、ご興味のある方はぜひご連絡くださいませ。
以上、「奇跡の組織」刊行記念トークイベントレポートでした!
よりセムコスタイルを詳しく知りたい方へ
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「奇跡の組織」書籍のご案内
弊社代表 秦卓民による書籍『奇跡の組織「最高の働き方」を導き出すセムコスタイル5つの原則』が発売中です。
今回のイベントでも「セムコスタイルってどんな組織なのか?」「セムコスタイルが大事にしていることは何か?」等についてディスカッションされました。
この書籍では「セムコスタイルとは何か?」「セムコスタイルのコンセプト」についてより詳細に書かれています。
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奇跡の組織「最高の働き方」を導き出すセムコスタイル5つの原則
著者:秦 卓民
出版社:光文社
発売日:2019年10月22日
価格:定価(本体1,600円+税)
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